2008年の情報のまとめ
【航路】日本海横断航路「試験航海」乗船および琿春・延吉視察団の報告(2008/11/1)
平成20年10月23日24:00に視察団一行60名を乗せた「新東春号」は新潟港をトロイツァ港を目指して出航した。
本船は前日22日18時ごろ中央埠頭に接岸し、23日09:30に出港の予定であったが舷側に漂着した油が本船からの 漏洩の疑いから海上保安庁の東京での分析結果が出るまで出航差し止めとなり、疑いが晴れたものの24日00:00 の出航となった。
この為トロイツァ湾内にはロシア時間25日未明に投錨し、08:00頃に接岸した。思わぬハプニングにより船内で2泊となった。食事は韓国式であったがマアマアと云う所、海は比較的おだやかで揺れも少なく、船長によれば佐渡沖通過までは約20ノットであったがトロイツァ港到着時刻に合わせて17.5ノットの巡航速度であった由。
トロイツァ港ではロシア入国手続き上で一部トラブルにより遅れたため2台のバスに分乗し、1台が先発して中ロ国境に向かった。トロイツァ港では既存の岸壁・港内舗装の改善は見られないが、10月に始まったマツダ車の自動車専用 船(1000台)のモスコー向けTSR(シベリア鉄道)輸送(10台x30両連結ブロックトレイン)などの為に自動車ターミナルが整備され多数の乗用車が保管されているのが見えた。
中ロ国境のロシア側は国境警備隊のゲート前で30分以上待たされ、クラスキノ税関ではパスポートチェックとイミグレーションおよび荷物検査(は簡単であったが)と相変わらず手続係官の不足による通関能率の低さや、通過旅客の為 の待合室がないなど、ロシア側の国境設備改善や通関手続きの合理化・迅速化が今後の課題である。
中国側では対照的に非常に速やかに手続きを終え、琿春市側のチャーターバスに乗り込み、日本工業団地の定礎式典会場に直行した。 定礎式典には鄧凱吉林省党常務委員/延辺州党書記・陳偉根副省長・呂相林省図們江開発弁 主任・松本盛雄瀋陽総領事・白晟昊東春フェリー社長・イワンロシア運輸連合会副会長らが参加した。
一行はその後琿春市の試験航海と日本工業園定礎式招宴に参加、琿春開発区内に先行進出している小島衣料琿春工場(1000人規模)を参観した後延吉にバスで移動した。 途中で図們市で北朝鮮南陽(ナムヤン)との間の国境地を視察した。 延吉では白山ホテルで延辺自治州主催の歓迎招宴に参加の後、新潟出発以来の湯船での長旅の疲れを癒した。
翌日26日午前に延吉市の開発区視察や延辺日本人会との懇談会など3班に分けて訪問を行い、延吉空港から仁川に向けて帰国の途についた。 視察団日程は思わぬハプニングがあって、中国では2日を1日間でこなすことになり、防川の中・朝・ロ3カ国国境視察などを割愛しなければならなかった。 途中延吉~長春間の高速道路が9月28日に開通し,乗用車では3時間、高速バスでは4時間の距離になった。最終区間の図們~琿春間は工事中であり、来年10月完成の計画は石炭層の上を通るための補償問題などのために遅れ、2010年10月に長春~琿春全線開通となる由。 吉林省としては東北振興政策の一環として、日本海横断航路と高速道路の海陸一貫運輸ルートならびに琿春日本工業園の実現に向
けた努力の姿勢が見受けられた。
来春3/4月の正式の定期航路の開設が待たれる。
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船内食事カフェテリア式 | 食堂にての説明会 | トロイツァ港下船風景 |
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トロイツァ港のマツダの新車 | 日本工業園定礎式会場へ | 定礎式典会場 |
【会議】第5回IFNATがウランバートルで開催(2008/10/15~10/17)
「第5回北東アジア国際観光フォーラム・ウランバートル 報告書」 ERINA特別研究員 鈴木伸作
2008年10月15日~17日の3日間、モンゴル・ウランバートル市において第5回IFNATが開催された。
参加者はモンゴルのほか日本、中国、ロシア、大韓民国の海外から82名の参加、現地参加の北朝鮮を加え、6ヶ国、220名を越える参加となった。 日本からは中山輝也在新潟モンゴル名誉総領事(注、NEANET会員)を団長に24名(内、学生8名)が参加した。 歓迎レセプションには自然環境・観光大臣をはじめモンゴル国政府幹部やウランバートル市長代理、海外参加者、モンゴル観光関連企業、研究者など多数が出席した。
来賓として市橋康吉在モンゴル日本国全権大使をはじめ、韓国大使、ロシア大使館、北朝鮮大使館幹部も出席するなど、国際色豊かなパーティとなった。 開幕式は、自然環境・観光大臣、ウランバートル市長代理、海外参加者を代表して関山信之北東アジア観光研究会会長(注、NEANET会員)が挨拶を行なった。
基調演説は各国の代表6名が行なった。
モンゴル代表 E. Battulga モンゴル自然環境・観光省局長 ウランバートル市代表 CH. Bat ウランバートル市長代理
日本代表 鈴木 勝 桜美林大学ビジネスマネージメント群教授
韓国代表 Kwan, Joong Bok 大邱大学教授
中国代表 張広瑞 中国社会科学院観光研究センター主任
ロシア代表 Tikhomirov,Sergey シベリア協定国際連合実行委員会副会長
その後、3つの分科会とポスターセッションも開催された。
①第1分科会 「北東アジア観光振興・各国からの視点と分析」 発表者8名
②第2分科会 「北東アジア観光振興・地域からの視点と分析」 発表者9名
③第3分科会 学生スピーチコンテスト 「学生交流における国際観光振興」
④ポスタープレセンテーション 11名
今回初めての試みとして、「社団法人 日本ツーリズム産業団体連合会」の協賛を受けて。「観光学を学ぶ学生論文発表会」が行なわれた。
発表者は、桜美林大学と大阪観光大学の学生とモンゴル国立大学の観光学科の学生の代表の6名が参加、優勝はモンゴル国立大学のBOLORTUYAさん、準優勝には大阪観光大学の伊崎亜紗さんと逸見優あんの共同発表が選ばれ、閉幕パーティにおいて表彰された。
併催行事として、モンゴル観光博覧会 ”EASTERN CIRCLE EXIBITION” が開催され、海外参加者のためにミニナーダム見学も組まれた。 草原のところどころ冠雪が見られ、気温零下のなか少年による競馬やモンゴル相撲などモンゴル側のホスピタリティに参加者から感謝の言葉が多く聞かれた。
最終日の閉幕式に5ヶ国代表が署名し共同宣言が発表された。この宣言文の内容は:-
① 北東アジア域内間の観光が発展するためには、観光関係者による交流と協力が重要であることを共通認識した。
② 北東アジア地域を平和で発展した地域にするためには、国境を越えた、交流と連携が重要である。
③ 観光関係者間で具体的な観光開発プロジェクトや共同事業を推進する。具体的には「お茶の道(Tea Route)や、「観光における危機管理」についての共同研究プロジェクトを立ち上げる・・・ などである。
2004年第1回会議を大連市で開催し、大邱市(韓国)、新潟市、束草市(韓国)、ウランバートル市への引き継がれ、次回6thIFNATは2009年5月、ロシアのハバロフスク市において開催される。 ハバロフスク会議が産業界、行政、学術研究者、学生など、より幅広い参加者による会議となるよう、是非多くの皆様の参加を期待したい。 (平成20年11月19日)
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5th IFNAT会議(1) | 5th IFNAT会議(2) |
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ミニナーダム モンゴル相撲 | 学生スピーチコンテスト表彰 |
【会議】金沢~釜山間に国際定期フェリー船「パンスター号」が就航(2008/6/20)
金沢~釜山間に国際定期フェリー船「パンスター号」が2008年6月16日初就航。
17日金沢港埠頭で記念式典が行なわれ谷本石川県知事・山出金沢市長および金忠慶駐新潟韓国総領事らが挨拶した。釜山から98人が上陸、金沢出航便には120人が乗船した。
昨年韓国から石川県に約2万人が訪れており航路の認知度が高まるにつれて増えることが期待される。一方では日本から韓国への訪問者数が伸び悩んでおり、
年間3万人の採算乗船者数(300人)を達成するには相当ハードルが高そうとの発言があったようだ。今後釜山~大阪航路や小松~ソウル、富山~ソウル航空便の利用や、修学旅行生などの団体旅客誘致を行なう必要があろう。(2008.6.20)
【ロシア】日ロ首脳、東シベリア開発の協力強化で合意(2008/4/26)
2008年4月26日モスコー訪問中の福田首相はプーチン大統領との首脳会談を行い、イルクーツクで日ロ共同で油田の探鉱作業に着手するなど東シベリア開発の協力強化で合意した。
JOGMECはイルクーツク石油社と共同でイルクーツク州北部鉱区の鉱業権ライセンスを取得し、原油・天然ガスの探鉱の第一歩として地質構造調査事業を開始する事になったと発表した。
将来この地域から生産される原油は、現在建設中の太平洋パイプラインで日本海側まで輸送される。
東シベリアー太平洋(ESPO)石油パイプラインは、西側の拠点タイシェットから建設が始まっており、スコボロジノまで全長2,694kmの第一段階計画は2009年末の完成が予定されている。
スコボリジノから中国の大慶に結ぶ国境のジャリンダまでは2008年6月に着工の予定。また石油輸出ターミナルとなるコジミノには処理能力60万b/dの石油ターミナル建設が第一期段階計画に含まれる。
スコボロジノからコジミノまでのパイプラインはその後の第二期段階計画だが、その間は鉄道で輸送される。
【その他】「環日本海シーアンドレール構想」情報(2008/2/6)
船と鉄道を一貫利用 ロシアヘ輸送 秋田港で実験
東北地方整備局 車部品など想定
国土交通省の東北地方整備局は船と鉄道を組み合わせ」秋田港経由でコンテナをロシアに運ぶ「環日本海シーアンドレール構想」の実証実験を七日に始めると発表した。自動車部品などのロシア向け輸送で秋田港を活用できるかどうか探る狙い。
日本海側の港から鉄道を利用した一貫輸送でロシアに海上コンテナを運ぶのは初。シベリア鉄道を経由してロシア内陸部への輸送ルートを確立し、物流拠点としての競争力を引き上げる。
自動車部品を詰めた40フィートコンテナを7日に仙台港駅(仙台市)で列車に積み込み、JR貨物と秋田臨海鉄道(秋田市)が秋田港に面した秋田北港駅まで運ぶ。16日にロシアのFESCO社が運航するコンテナ船に積み替えて出港。17日に極東のボストーチヌイ港に到着する段取りだ。
実験には貨物集荷やコンテナヤードでの荷役などで日本通運や秋田海陸運送(秋田市)が協力。秋田県貿易促進協会(辻兵吉会長)が荷主として参加する。
終了後に輸送中の振動が貨物に与える影響や各拠点での積み換えにかかる時間、効率性などを分析する。
東北では自動車産業の集積が進みつつあり、組み立て工場への部品搬入には鉄道も使われている。東北地方整備局の構想はロシア向けコンテナを国内工揚向けの列車に連結し、シベリア鉄道を利用して自動車組み立て工場が立地するロシア西部に運ぶルートの開発が念頭にある。
同整備局は欧州経由より輸送日数が縮まると指摘する。
港で積み下ろしした貨物の運搬はトラックが主流だが、CO2排出など環境問題から鉄道への関心が高まっている。横浜港や東京港では鉄道と船を利用して海上コンテナを欧米やアジアに輸出している。日本海側では港湾に接続する臨海鉄道は秋田港しかない。
(出所:日本経済新聞東北版2008.02.06朝刊)