2012年の情報のまとめ
【ロシア】APEC後のロシアはどう変るのだろうか?
アジア太平洋経済協力会議(APEC2012)は9月7~8日の首脳会議を以って終了した。ロシアのメディアはどう伝えているのか?
「ロシアNOW」の紙面から紹介します。 人口60万人のウラジオストックに世界21カ国・地域の指導者たちがやってきた。
会場となったルースキー島は海軍基地として外国人の立ち入りが禁止されていた5000人の島であったが、今後は15万人に膨れ上が
ると見込まれる。連邦政府は6793億ルーブル(約17億円)を投じたが、その多くはウラジオ市内から金角湾を横断し、更にルースキー
島につなぐ2つの大吊り橋の建設に割り当てられた。サミット会議場やホテル、空港から会場への道路建設に使用された。
人口の増加要因は、4つの地方大学を統合して出来た「極東連邦大学」の新しいキャンパスである。市民のために必要な一般道路、
上下水道などの社会インフラなど未整備な部分が残っているが、市内は美化運動で綺麗になり、象徴的な世界一の長さを誇る斜張橋
は海外観光客を呼ぶ目玉となり、観光都市としての繁栄を期待しており、今のところは余り批判は聞かれないようだ。
さてサミット後のロシアの経済はどう変るのか?
EU傾斜の転換: シュワロフ第一副首相「10年以内にAPEC諸国との貿易額をEUのそれより増やしたい」。現在EUとの貿易はロシアの
貿易総額の約半分に相当する約3200億ドルであるが、APECのそれは、その半分以下である。
交通インフラ: シベリア鉄道は北極海航路と並びロシアを欧州・アジア間の主要物流ルートにする計画の要をなしている。
複線化や物流施設建設で数十億ドルの投資を必要とする。ロシアの港も大きな役割をになっている。
年間5億4千万トンの貨物を2020年までに9億トンにする予定だが、この増加分の半分は太平洋側の港が担う。
農 業: 「APEC諸国は世界の穀物全体の37%うぃ占めているが、ロシアのシェアは今のところゼロだ」、だが「ロシアにはアジアへ
穀物を輸出するために必要な道路も鉄道も港もない」
天 然 資 源 : 日本との70億ドルの取引で建設される工場が生産する液化天然ガス(LNG)の殆どは日本への輸出が想定されている。
パイプラインの能力を拡大する計画は、輸出先の欧州依存を避けようとしているロシアにとって重要な役割をはたすだろう。
製 造: ロシア自動車大手のソルレス社の工場でのマツダ車の現地生産がスタートした。ウラジオで最近稼動し始めたヒュンダイ(現代)
のエンジン工場は自動車生産の地元定着が現実のものとなりつつある。
資源輸出依存: 残される最大の疑問は極東を含むロシア全体がどの程度、資源輸出への依存から脱却し、付加価値の高い製品をアジアへ輸出
することができるか、ということだ。 (ロシアNOW 2012.10.11)
【北朝鮮】羅先経済貿易区へ中国企業が進出計画(2012/9)
2012年9月長春市で「中朝共同管理委員会」の投資説明会が行なわれ、中国交通集団、中国鉄道建設集団、招商集団、亜泰集団など中国大手企業が進出する模様。
【会議】第8回IFNATが韓国・全州で開催(2012/8/22~8/24)
会場は全羅北道全州市、全州大学。今回の主要テーマは「北東アジア地域間の国際観光と文化そして未来」とし
①北東アジア地域の文化と観光振興、
②北東アジア地域間の観光協力・連携、
③国際観光の推進政策-医療観光、観光産業マネージメント。
今回は「第6回北東アジア観光学会 学術会議・韓国全州会議」との合同で開催されるので、参加者は約300人と予想される。
【北朝鮮】中朝間、共同開発推進の方針で一致(2012/8/15)
中国と北朝鮮は8月14日北京で協議し、両国の境界地域の共同開発を積極的に推進していく方針で一致した。
対象は羅先(ラソン)経済特区と、黄金坪(ファングムピョン)・威化島(ウィファド)経済特区。
今回の協議は金正恩第一書記下の新体制では初めて。
中国商務省によると「共同開発を積極的にすすめることが、中朝間の友好協力関係を強化し地域の安定と繁栄にも重要な意義をもたらす」との認識で一致した。
【中国】CLBチャイナ・ランドブリッジの最新情報(2012/7/17)
北東アジア輸送回廊のうちの第7ルートであるCLBチャイナ・ランドブリッジについて、あまり情報がありませんが、このルートのパイオニア企業である株式会社
日新様のご協力により、最近の状況を伺ったので報告します。
CLB=China Land Bridgeは、中国の連雲港から新彊ウイグル自治区アラシャンコウ(阿拉山口)を経由し、カザフスタンのドステイック(旧ドルジバ)から
中央アジア、更にはオランダのロッテルダムに至る国際輸送回廊である。連雲港からアラシャンコウまで4,114km。1992年12月に第一便50TEUが輸送開始され、
2010年までの18年間の総輸送量は42万TEUである。現在の貨物量は年間約7万TEUを超える。
日本からは自動車およびその部品、化学品、ゴム製品、機械設備など。鉄道貨物はドストゥクで積替えが行なわれる。一方中央アジアから同ルートを利用して日本
に運ばれるものはほぼ皆無である。理由は鉱物資源などのバルキー貨物のため、鉄道ゲージが同じで積替えの必要がない鉄道でノボシビルスクでSLBに接続してロシア
の極東港に運ばれる。 このルートは主に中国と中央アジア間の貨物で、2008年のリーマンショック後の回復がめざましく、一時は1万本を超えるコンテナが滞留した。
国境での貨物処理能力不足やカザフ側の貨車供給不足などが理由であった。
最近は中国からの衣類・家電製品・食品などの輸出量が増大しており、ウルムチからアルマトイを結ぶトラック輸送ルートのために国境のホルゴスに倉庫や通関施設
が新たに整備されている。
(提供:㈱日新)
(左)連雲港ターミナル (真中)ユウラシア・ランドブリッジ東端表示 (右)在アルマトイ企業ターミナル
【ロシア】ウラジオストク大吊橋の開通式(2012/7/5)
ウラジオストクの大吊り橋の開通式が7月2日行なわれた。 (NEANETメールニュース No.35 '平24.7.5 ウラジオ代表井上大樹さん提供)
7月2日極東訪問中のメドベージェフ首相が吊橋の開通式に出席した。今回の開通式は試験的な段階で、地元市民の参加もなく盛り上がりに欠けたイベントの
ようでした。
8月始めには一般の人や車が渡れるようになるとのこと。APEC関連施設のうち完成が間に合わないものもあるようで、ハイアットグループの5星ホテルなどが
間に合わないが、豪華客船をチャーターすることで対応するので問題ないとのこと?!オペラ劇場も間に合わないようだ。
【エピソードその1】 地元通信社によると、ウラジオでの移動の際はメドベーチェフ首相自らハンドルを握ったそうです。その際ミクルシェフスキー知事
が同乗しており、首相は『知事を乗せてあげたけど料金は払ってくれなかった。知事は私に借りができた。プーチン大統領に返さないとね』と知事に冗談
を語ったそうだ。 (ミクルシェフスキー沿海地方知事は、元極東連邦大学の学長で、3月に前ダリキン知事に代わって就任した。APEC会場施設の一部は
極東連邦大学のキャンパスに予定)
【エピソードその2】 (ロシアのアネクドート) メ首相がFACEBOOKやツイッター好きなのは有名です。島についた首相が早速スマートフォンを取り出し
たところ、新着メールが届いていました。”ようこそ、日本へ!” (北方領土は日本に近いため実際にローミングされることもある由)
(左)開通式でのメドベーチェフ首相 (右)ルースキー島大吊り橋
【ロシア】ロシア極東で自動車生産が活発化の動き(2012/5/20)
ウラジオストクではロシア3位の自動車メーカーのSOLLERS(ソラーズ)が2012年12月に韓国の双竜(Sonyong)との契約によりいち早く組み立て工場を
立ち上げた。
この工場は旧ソ連時代の造船工場の跡地であり、自前の埠頭や鉄道引込線も有している。 この場所に日本のトヨタとマツダが組立て工場進出するこ
とが発表され注目されている。
工場建屋は双竜・トヨタ・マツダ用にそれぞれ既存の別棟が用意されている。下掲の写真は、2012年3月現在の双竜車の組立て工場のものであり、広々
と清潔な工場内でのアッセンブル作業が行なわれていた。溶接と塗装工程が入っていないので静かである。
トヨタは、2011年3月に三井物産とソラーズとの合弁ソラーズ・ブッサン(50・50%)でランドクルーザー・プラドを年間1万2千台を組み立てる
計画を発表したが、生産は2012年秋以降になる模様だ。
マツダは、2012年4月27日に自社のホームページでソラーズと合弁会社の設立調印を発表した。社名はMAZDA SOLLERS Manufacturing Rus. で50/50%
出資。2012年秋よりロシア市場向けの新型SUV「MAZDA CX-5]やソラーズ保有のブンド車両の組立てを計画。生産能力は5万台規模から開始し、将来は
7万台を目指すとのこと。 マツダ車のロシア市場での2011年の販売実績は43,561台(前年比50.2%増)。
なお、トロイツァ港の情報では、2010年の輸入総数23,264台でその内マツダ車は22,950台。2011年は総数39,278台その内マツダ車
は36,459台とのことである。
日産自動車のカルロスゴーン社長は、仏ルノーと共同で2014年までに、ロシア最大手のアフトワズを買収すると、2012年5月14日発表した。
極東での生産は不明。
(SOLLERS工場(2012.3訪問時) 韓国双竜のノックダウン)
【ロシア】ウラジオストクの大型吊橋がつながる(2012/5/20)
APEC2012の象徴ともなる2つの大型つり橋(1)金角湾大橋(2)ルースキー島大橋が夫々4月につながり、
7月に完成式典が挙行されるとのこと。
現地で橋脚のコンクリート工事に携わっている日本企業・会澤コンクリート社から提供された写真を供します。
【航路】「日本海横断航路」の日中双方代理店、貨物輸送で協力へ(2012/5/2)
新潟ートロイツァー中国東北部を結ぶ「日本海横断航路」の日中双方の代理店が2012年4月24日吉林省長春市で貨物輸送を円滑に進めるための契約書に調印した。
(2012.5.2)
契約したのは、新潟国際海運(新潟市)と吉林省長吉図国際物流集団貨運有限公司(琿春市)で、双方の代理店が夫々の国内輸送を担当して輸送の手配、貨物
の保管、引渡しなどをスムーズに行なえる狙い。
これにより新潟-トロイツァー中国東北部(琿春・延吉・長春など)の海上~陸上の海陸複合輸送の責任体制が出来ることになる。
【ロシア】右ハンドル中古車の輸入規制の動き(2012/3)
日本からの右ハンドル中古車の輸入規制は下記のように2010年9月に撤廃されたために輸出量がやや持ち直した。
2012年9月にロシアはWTOに加盟することで、現在中古車に掛る30%暫定的輸入関税率は新車と同じ25%に下がると云われている。
またロシア極東では韓国・日本のメーカーが相次いでノックダウン生産を開始することでもあり、右ハンドル車の商業輸入を規制する
可能性が高まっている。但し個人輸入の道は残されているようだ。
【会議】第7回IFNATが新潟で開催(2012/2/6~2/7)
ハルピンで開催予定の第7回会議は結局中止となり、その代わり2012年2月6-7日に新潟で開催されました。
主要テーマは「北東アジア地域間の国際観光振興と連携・協力」とし、
①北東アジア地域間の国際観光振興と連携促進、
②東日本大震災の国際観光への影響と復興の現況、
③各国・地域の観光紹介・観光振興策など。
参加者は、日本(90名)、中国(9名)、ロシア(3名)、韓国(10名) 合計約110名であった。
会場は朱鷺メッセ、交流会はホテルサンルートで行なった。
次回2012年第8回IFNATは全州(韓国)で行なう予定。
NEANETは中国・ロシアからの代表に対するビザ発給に協力をした。