2013年の情報のまとめ
【ロシア】琿春~マハリノ間の鉄道が再開する(2013/9/12)
【共同】 琿春~マハリノ(カミショバヤ)間約40kmの鉄道が、2013年8月2日に試運行のための記念式典が挙行された。
式典後に石炭を積載した30ワゴンの貨物列車が中ロ国境を越えて琿春貨物駅まで運ばれた。式典でロシア運輸省次官は
「中国とロシアが国境で協力関係を築くことで極東は発展し、アジア太平洋地域と一体化出来る」と述べ、海への出口を
持たない中国東北部と鉄道を通じて連携して行く方針を強調した。【NHK13.8.3】
*『NEANETのコメント』 このマハリノから琿春までの40km区間は、中国標準軌道幅(1435mm)とロシア広軌幅(1520mm)
の4本のレール(4本混合線)で敷設され、2000年にロシア唯一の民営「金環鉄道、ザラトイズベノ」として試験的にスタートしたが、ロシア国内
の訴訟問題などで2004年からは休止となっていた。 このたびロシア鉄道省により再開の運びとなった。
貨物の積替えは琿春貨物駅だけで行なわれる。マハリノでシベリア鉄道(TSR)に接続し、いずれ国際旅客列車も運行することになる。
現在琿春にはロシア人観光・ビジネス訪問者が約2000人/日とのことなので、中・ロ鉄道りょきゃくの潜在利用者はかなり多いと思われる。
マハリノからザルビノ港までの31kmは最寄のスハノフカ駅から支線で結ばれている。しかし残念ながら中国標準軌道の線路で中国内陸部に
直結はされない。
今回試験的に運ばれた石炭は琿春で下ろされたが、その後の仕向け先はいまのところ定かではない。
琿春の関係者によれば、経済運行は10月以降に開始される見込みとのこと。
2013.8.2 試運行の貨車
【北朝鮮】羅津港第3埠頭の最新の状況(2013.8.6)
【延辺日本人会ニューズ11号2013.8.1】により最近の羅津港第3埠頭の状況(写真)が伝えられました。
この第3埠頭は、ロシアが49年間の使用権を得て工事が進められており、図で分かるように従来海に面して
利用されていなかった右側岸壁が、船舶の接舷が可能なように拡張工事がされている様子。また重量物を積載
するために岸壁が相当強化されているようだ。
羅津港はロシア極東の最南端に位置する不凍港として重要視されている。TSRシベリア鉄道のハサンから羅
津港までの線路の改修工事もすでに終えており、本気で羅津港を利用しようとする意欲が窺われます。
ロシアはマハリノ~琿春間の中ロ鉄道接続などと共に、極東の輸送インフラの強化を行なっている。
【NEANETのコメント 2013.8.6】
| |
工事中の羅津港第3埠頭
| 第1埠頭は中国が使用 第3埠頭はロシアが使用
|
【モンゴル】モンゴル鉄道の日本工営契約の状況(2013/8/6)
NEANETメールニュースNo.42 13.7.18にて、日本工営がモンゴル鉄道(MTZ)との間で全長1600kmの貨物鉄道の設計業務を約17億円で受注した
との記事を紹介した。【日経 13.7.4】
この度日本工営㈱を訪問して、ご厚意により詳しい説明を伺う機会を得られたのでここに紹介します。
案件名は「タバントルゴイ石炭輸送鉄道建設計画設計」、タバントルゴイ炭田(世界最大級64億トン埋蔵量)の石炭を搬出するための総計約
1600kmの新設鉄道の建設計画。
添付図面のようにタバントルゴイ炭田~チョイバルサン間+クート~ビチット間=合計1370km、及びチョイバルサン~エレンツアフ間の既存線
210kmと並行する新線路建設計画である。
契約内容は、地質・測量・環境調査、基本設計、調達支援などに係るもので、期間は2013年5月から2014年7月の7ヶ月間。
石炭の搬出ルートは:
(1)チョイバルサン以後シベリア鉄道によりロシア極東港湾へ
(2)クート~ビチット以降中国鉄道へ
(3)タバントルゴイ~ガシュンスハイト(267km)は韓国サムスンが2013年5月に工事を開始している
(4)クート~ナムルグ(380km、図們江ルートは契約に含まれていない)。
既存のウランバートル鉄道(南北線)はモンゴル:ロシア=50:50の出資で運用されているが、今回のモンゴル鉄道(MTZ)は2008年にモンゴル単
独で設立され、チンギスボンド(モンゴル国債)を発行し、それを資金源として今回の設計・工事の実施として案件を実施している。・・・・・・・
とのことです。 【日本工営より提供 2013.8.2】
【ロシア】日ロ首脳会談(2013.4.29モスコー)とロシア極東の情勢
「安倍総理の訪ロと今後の日ロ関係」 (NEANET情報交換会時の寄稿文 吉田進 平25.5.28)
安倍晋三総理は、4月29-30日にロシアを訪問した。29日にはプーチン大統領と会談し、「日露パートナーシップの発展に関する日本国総理大臣と
ロシア連邦大統領の共同声明」が発表され、同時に9つの文書が調印された。その他に民間で8件の調印文書を発表した。
1.成果
(1)平和条約締結の交渉を始める。それぞれの外務省に指示を出し、双方が外務次官レベルで解決案を煮詰める事となった。
(2)首脳部の相互訪問。外相は、1年に一回相手国を訪問する。プーチン大統領は2014年訪日を約 束した。
(3)防衛・外務両省参加の2+2協議を行なう。
(4)経済
4月30日には経済フォーラムが開催された。
そこで討議・合意されたのは、農業・食品工業分野の協力。医療と都市環境・省エネの各分野におけ る協力である。
この中でも目立つのは、ウラジオストクのLNGプラント建設(ガスプロム)、ナホトカの極東石油化学コンビナートの建設(ロスネフチ)、
北海道とアムール州の農業協力、日建設計・野村総研のモスクワ地下 鉄駅の改造である。
これらの協力を実のあるものにするために、「日ロ投資プラットフォーム」が設立される。これは日本の企業の対ロ進出を支援するための基金であり、
ロシア直接投資基金(RDIF 2011年6月設立)、対外経済銀行(VEB)と日本国際協力銀行(JBIC)が設立に同意した。
(5)運輸分野において国土交通省とロシア運輸省との間で覚書が調印され、シベリア鉄道の競争力の強化、輸送インフラ分野・輸送施設面での
取り組み、物流情報伝達の効率化、北極海航路の利用に向けた協力等が合意された。
2.日ロ平和条約の締結交渉について
(1)プーチンの支持率:62%(2013年1月 レバダ・センター)、安倍内閣の支持率:65% (5月18-19日 朝日新聞)
(2)ロシアが求めているもの:シベリア開発への日本の投資、経済協力体制の確立。
日本がもとめているもの: 北方領土の返還。
共通しているもの: 「戦後67年を経て日ロ間で平和条約が存在しないことは異常である」という両国首脳の共通認識。アジアにおける
安全保障、平和的環境の維持、北朝鮮問題の解決。
解決方法: 共通課題の解決のために努力する。その過程で、最大限に相手側の要求を満たす。その接点が、北方領土問題の解決-平和条約の締結
となる。
(3)今回の会談では、プーチン大統領が、領土問題の解決策として中国*とノルウエー**の例を出し、面積を半々に分け合う2等分方式に触れた。
安倍首相はロシア側が北方領土交渉にもこの前例を適用するのか見極める構えだと言う。北方四島の返還方式をめぐっては、日本国内でも2等分方
式が一つの案として考えられている(当初は、この論を唱えるのは、「裏切り行為」なみに扱われた。色丹島と歯舞(はぼまい)群島に加え、国後
と択捉島の一部(約15%)を日本領とする案だ。
(4)今後の交渉は、「2003年の共同声明および行動計画において解決すべきことが確認されたその問題を最終的に解決する」(政府発表)ことを前提に、
両首脳は「日露パートナーシップの新たな未来志向の地平を模索する中で、両首脳の論議に付すため、平和条約問題の双方に受け入れ可能な解決策
を作成する交渉を加速化させる」との指示をそれぞれの外務省に対して共同で与えることで一致した。今後外務次官クラスの会談、貿易経済に関す
る日露政府間委員会議、極東・シベリア地域発展のための官民合同会議などを通じて双方の主張を集約していく。
* ロシアは2008年、アムール川(中国名:黒龍江)とウスリー川の合流点の中州にある大ウスリー島を二分することで中国との国境を画定した。
10年にはノルウエーとの係争海域を2等分し、40年に及ぶ境界線論争に終止符を打った。
** プーチン氏は首脳会談で中国やノルウエーの事例について「面積を半分づつにした」と説明。そのうえで「両事例は第二次大戦に起因す
るものではないという点で、難しい話ではなかった」とも指摘し、北方領土問題とは違いがあるとの認識をしました。(以上)
2.北方領土問題「面積等分」方式にプーチン大統領が言及
プーチン大統領が過去に他国との領土問題で面積等分方式を採用した経緯に言及していたことが首相同行筋が明らかにした。2008年の中国との国境画
定や2010年のノルウエーとの大陸棚の協会確定交渉の例を 説明した。 北方領土に当てはめると、択捉島の西部に国境線を引き多くをロシアに割譲、
日本は歯舞・色丹・国後の3島と択捉島の一部を領有する形が想定される。政府は5月中にも外務次官級協議を開く方向で調整に入る。
【航路】束草~ザルビノ~琿春間に定期フェリー航路が再開(2013/4/24)
今回再開した貨客フェリーは、スエーデンのステナライン社と韓国の大亜航運との合弁会社「ステナ大亜ライン
Stena Daea Line Inc.」が運航する”ニューブルーオーシャン新藍海号”。
この航路は2004年に就航した「東春フェリー」が2010年10月に停止したままとなっていた。
本船は束草~ザルビノ間を週2回運行する。全長160m船幅25m、総トン数16,485トンで、最大5780トンの貨物と
750人の乗客を運ぶことが出来る。今回の復航により、中国-韓国間の経済・人的交流の発展が期待される。
”ニュー・ブルーオーシャン”
【北朝鮮】羅津に3つのカジノが出来た(2013/4/22)
羅津にはカジノが3つになりました。元々あった香港エンペラーグループのカジノ、今年1月に開業した羅津ホテル前のカジノ、
それから羅津港に浮かぶ船のカジノです。エンペラーは最低500ドルを交換しなければ入れませんが、それ以外の二つは基準はありません。
船のかじのは中に泊まることも出来ます。完工は一般には春からですが、朝鮮国際旅行社の友人に尋ねたら、今年はもう既に始まっているとのことでした。
この船のカジノ、船はシンガポールの船で、船員は朝鮮人、マレーシア人、フィリピン人、カンボジア人、中国人など多国籍でした。
(延辺日本人会ニュース04 2013.3.15)
カジノ船”皇星”のパンフレット
【ロシア】トヨタ「プラド」のウラジオ生産、間もなく開始(2013/2/1)
1月25日SOLLERS社のウラジオストク工場内に2010年8月に設立した合弁会社「ソルレス・ブッサン」の生産開始式典が
シュワロフ第一副首相の出席のもとに行なわれた。
車種はロシアで人気の高いランドクルーザー“プラド”で、トヨタ田原工場からのセミノックダウン部品を三河港(豊橋市)
からコンテナ船(SINOKOR長錦商船)で1月25日積み出された。
本格生産は2月にスタートする予定で月間約千三百台を運ぶ。本船は関門海峡経由で4日でウラジオストクに到着する由。
これにより三河港のコンテナ取扱い量は年間4万TEUから7万TEUに増えるとのこと。(CHUUNICHI Web 2013.1.26)
昨年10月からマツダが4WD“CX-5”のノックダウンを先行している。マツダの場合は完成車を韓国浦項にある大宇ロジスティクス
のノックダウンセンターで分解した約30部品をSOLLERS工場に運び再組立てされる。SOLLERS工場では2009年から韓国の双竜
(サンヨン)自動車のノックダウン生産を開始しているが、敷地内にある夫々独立した別棟の工場内で生産が行なわる。
組立工程中では何れも溶接と塗装のラインは設置されない。
ロシアの完成車の輸入関税はWTO加盟により25%(従来の30%からダウン、2019年に15%)に対して部品輸入では0%~5%
になるし、完成車のウラジオストクからモスコーへの鉄道輸送料が免除される優遇策を受けられる。
ロシアの自動車需要は年間300万台になると予想されており、外資にはローカルコンテンツ60%を目指した部品生産企業の進出、
従業員の雇用促進や技術移転が期待されている。