最近、世界情勢を反映して中国とロシア両国間の政治・経済関係が緊密化されており、この二つのプロジェクトに関しての報道がしきりと伝えられています。実現されるまでには多くの時間と状況の変化が予想されますが、両国政府間の共同プロジェクトに位置付けられており、その結果は日本も含めた北東アジア地域間の物流と経済にとって大きな影響を及ぼしますので今後の推移を見守って行く必要がありましょう。以下幾つかの報道から整理して見ました。(2014.11.26)
「大ザルビノ港(Big Port ZARUBINO)」と「琿春・集荷センター」のプロジェクトについて:
「大ザルビノ港(Big Port ZARUBINO)」プロジェクトは、本年5月20日プーチン大統領の中国訪問時にスンマグループ(Summa Group)と吉林省の間で合意文書が交わされた。 さらに10月13日にメドベージェフ首相と李克強首相との間に国家間協力に関する協定書が調印され、その際に Summa Groupの^V.カヤシェフ社長と吉林省陳偉根副省長との間に後述の「琿春・集荷センター(Logistic Center)]プロジェクトについての調印がされた。 最近11月10日付けのSumma Groupのプレスリリースによると、大ザルビノ港の港湾設計は2015年2月に始まり、Summa Groupはこのプロジェクトに10~12億ドルを投資するとのこと。2018年に供用開始予定。
1)「大ザルビノ港」の計画内容: 中国側とロシア側の発表に若干の違いがあり分かり難いので、ERINAのメルマガ・北東アジアウォッチ<No.246 2014.10.3>(吉林日報9月20日)に詳報があるので、その内容を下記に紹介します。
投資総額:約30億ドル 年間貨物取扱能力:6000万トン 全長:3km
現在のザルビノ港の4バースに加え、新たに12~15バースを建設する。
(1)コンテナ専用ターミナル 3~5バース、 年間取扱量100万トン
(第1次50万TEU)
(2)ばら積み貨物専用ターミナル 3バース、 年間取扱量4000万トン
(3)Ro-Ro船貨物専用ターミナル 2バース、 年間取扱量50万件
(4)穀物専用ターミナル 1~2バース、 年間取扱量1000万トン
(5)水産物専用ターミナル 1~2バース、 年間取扱量300万トン
(6)アルミナ積替え輸送専用ターミナル 1バース、 年間取扱量130万トン
(ロシア国内向け)
さらにロシア側の資料で補足すると、(注記:
茶色の文字色)
(a)PassengerTerminal 50万人/年間
(b)穀物サイロ 40万トン(統一穀物社United Grainの取扱い。スンマグループが50%+1株を持つ)
このほか、同時に
琿春からザルビノまでの複線鉄道(注、中国標準軌道線路をマハリノからザルビノ港まで延伸か?)、道路などのインフラ建設も含まれる。
【参考:
現在のザルビノ港と将来ビジョン PDF】
2)「琿春・集荷センター(Logistic Center)」の内容: このロジスティックセンター(ドライポート)は「大ザルビノ港」プロジェクトの一環として、ザルビノ港を経由する通過貨物を取り扱い、またロシア国内向けの鉄道輸送貨物や、ザルビノ港まで支線鉄道(輸送能力1千万トン)で輸送する。 トランジット輸送をスピードアップして物流の効率化に寄与する。また内陸港として中国とロシアの異なる線路幅問題を解消する。貨物量は年間2000万トンになると予想される。 取扱い貨物の大部分は中国東北3省から南部の省に向けたものを含め、中国のトランジット貨物量は全体の60%に達するとの情報(コメルサントデイリー10.14報道、他)