NEANET総会・情報交換会
【第12期(2015年4月~2016年3月)の会員総会の報告】 (2015/5/21)
今期の総会等は2015年4月1日に移転したNEANETの新事務所のある(一財)みなと総合研究財団の3階会議室にて開催された。以下報告致します。
開催日時: 平成27年5月21日(木) 場所:みなと総研3階会議室
理事会 13:30~14:15
総 会 14:30~15:15
情報交換会 15:30~17:45
懇親会 18:00~19:00
吉田会長 | 情報交換会時の会場 |
1.理事会と総会に於ける審議事項
第11期(2015年4月~2015年3月)の事業活動報告
概況:
1. 2014年度の北東アジアの情勢について
(1)ロシア
ロシアは近年拡大するアジア太平洋経済との交流拡充を狙い、「東方シフト」を本格化させ、例えばウラジオストクでのAPEC2012を成功させたが、2014年2月のクリミア併合、ウクライナ問題の発生により、欧米諸国による経済制裁が実施され、現在に至るまで、欧米への輸出の大幅削減を与儀なくされており、併せて石油価格の暴落、ルーブル安、外貨の流出などにより経済の低迷が続いている。 我が国も欧米諸国の経済制裁に参加しており、プーチン大統領と安倍総理大臣との緊密な関係維持に影を落とすものになっている。
(2)中国
中国においては、汚職腐敗の摘発運動が全国的に拡大し、すでに党の幹部や元人民解放軍トップ、多くの公務員などが摘発されている。
世界第2位の経済大国である中国は2010年以降経済成長率が落ちてきており、IMFの2015年4月の推計によると、2014年7.36%、2015年6.76%となっている。(日本はそれぞれ、-0.06%、1.04%)。 2000年代以降、東北3省は中国全体よりも概ね高い成長を維持していたが、2014年は遼寧省(5.8%)、吉林省(6.5%)、黒竜江省(5.6%)ともに中国全体(7.4%)を下回った。省・自治区・直轄市の中でも3省は最下位グループに位置し、内モンゴル自治区(7.8%)とは対照的となっている。
習近平首席の主唱する【一帯一路】(「シルクロード経済ベルト」と「21世紀の海のシルクロード」)と【アジアインフラ投資銀行(AIIB)】の設立構想から57ヶ国の参加を受け実現に向けて動いている。成長するアジアの経済をさらに押し上げるためには、産業基盤や物流インフラの整備が必要であり、このためには膨大な資金が要る(年間7500億ドル)とし、既存の世銀やアジア開発銀行(ADB)等の国際金融の枠組みを補完する構想とされている。
これは、従来より当NPOが関わっていた北東アジア輸送回廊ネットワークビジョンを大きく拡大し、ユーラシア全域及び南シナ海、インド洋までを包含したものとも見える。
ロシアの「東方シフト」により、ロシアと中国の関係は密度の度合を深めている。中国はロシアの石油・ガス・LNGの最大の輸入顧客としてだけでなく、資源開発権や輸送インフラ建設を絡めた取組を進めている。
図們江開発地域においては、下記進行中である。
①琿春~マハリノ鉄道(琿馬鉄道)の往復の貨物輸送を開始
②スンマグループ(Summa Group)と吉林省が「大ザルビノ港」共同開発の調印
(3)モンゴル
モンゴルは上記のAIIBへの参加を最初に名乗り上げた国の一つで、AIIB構想への期待が非常に大きい。豊かな地下資源を輸出するための鉄道等の交通インフラ建設が必要であることによる。
一方日本との関係では、2015年2月に「日本・モンゴル経済連携協定(EPA)」が締結され、4月に円借款案件「新ウランバートル国際空港建設計画(第2期)」にかかるE/N等の署名・交換がおこなわれた。(すでに供与済みの288億700万円と合わせると、本件事業総額は656億5,700万円(2017年に開港予定)。
2.NEANETの事業活動状況:
2014年1月に新潟ときメッセでNEANET設立10周年を記念してセミナーを開催し、つぎの10年に向けて【Next10】のスタートの年と位置付けた。
1)一年前の5月21日に第11期の総会・情報交換会を開催した。
2)会長の交代: 吉田進新会長の下に新体制がスタート、10年間に亘った花田麿公前会長は名誉会長に就任。
3)「北東アジア交流白書2013」を発刊し、NEANETホームページ上に公開。
4)情報交換会(5/21):
講師に長谷川武国交省大臣官房参事官を迎えて「極東・シベリア地域における国交省の取組み」について特別講演をいただいた。引き続き日本海側港湾関係者(秋田・新潟・北陸3県・境港)からの最近状況について紹介。また最近の日ロ関係、日中関係、ロシア極東のコンテナ物流動向、IFNAT北東アジア国際観光フォーラム(北九州)等について関係者からの報告と意見交換が行なわれた。
5)NEANET事務所の移転:
創立以来の渋谷区表参道新潟館ネスパス内から、港区虎ノ門の(一財)みなと総合研究財団内に3月31日移転した。移転に際しては臨時理事会と臨時(みなし)総会を開催し、全正会員の承認を経て実行した。
6)受注事業活動:
下記の業務を受注し、会員および有識者の協力により実施した。
(1) 日本総研
「ロシア極東地域とシベリア鉄道を介した日露国際物流の効率化方策および中央アジア諸国の物流現況に関する調査検討業務」(国交省総合政策局調査案件の部分、他)
(2) みなと総研
「ロシア港湾インフラ開発戦略資料の英訳」
(3) 北陸地方整備局新潟港湾整備事務所
「中国東北部および極東ロシアの近況およびASEAN地域における開発プロジェクト等の調査」
(4) I社(ロシア企業)コンサル協力
(5) 「IFNAT in 北九州」開催協力
以上、合計金額:2,978,000円
7)広報活動:
(1)ホームページ(ホームページビルダー7から18にver.UP)
(2)NEANETメールニュース(No.48~59)
8)その他の活動:
(1)IFNAT(北東アジア国際観光フォーラム)in北九州
2014年8月開催に協力
(2)北東アジア医療ツーリズム研究会
第1回研究会開催(2015年2月)、今後2~3階継続予定
2.第12期(2,015年4月~2016年3月)の事業活動計画
1.概況:
近年はアジア太平洋地域を取り巻く経済連携の動きが活発であるが、本年度はこれらが本格化するものと思われる。
◆2015年末までに【ASEAN 経済共同体(AEC)】(ASEAN東南アジア諸国連合10か国、総人口約6億人)が発足予定で、域内のモノやヒトの移動、サービスの自由化を進める。2018年までに関税をほぼ全廃の予定。
◆【環太平洋経済連携協定(TPP)】は先の安倍首相とオバマ大統領との首脳会談により調印が最終段階にある。
◆さらに、上記の事業報告において述べたように、習近平首席の主唱する【一帯一路】と【アジアインフラ投資銀行(AIIB)】の設立構想がある。
これらの経済拡大、交流拡大に水を差すのがロシア情勢であるが、ウクライナ情勢のロシアと西欧諸国間の軋轢がやや沈静化に向かっており、原油価格も米国のシェールオイルの減産傾向もあり60ドル台で推移、ロシアおよび東南アジア諸国の通貨下落も落ち着きを見せている。
2.北東アジアの開発事業:
今年度本格化もしくは具体化すると予想される事業は以下の通り。
(1) ロシア極東の石炭積み出し港の新・増設
ボストチヌイ、ナホトカ、ウラジオストク、ポシエトなど
(2) サハリン・宗谷海峡天然ガスパイプライン
(3) ウラジオストク・新潟間日本海横断天然ガスパイプライン
(4) ウラジオストク工業生産型経済特区や自由特区の制定
(5) 「大ザルビノ港」スンマグループと吉林省が共同開発プロジェクト
(6) 羅津港第3埠頭の整備。北朝鮮鉄道整備とロシアに資源開発権
(7) 「綏芬河輸送回廊(プリモリエ1)」と「図們江輸送回廊(プリモリエ2)」
の中ロトランジット国境通過施設・通関システムの改善と物流量のUP
(8) DBSクルーズフェリーのザルビノ~束草(ソクチョ)~舞鶴間に就航計画
(9) 日本海横断航路 新潟~ザルビノ/ウラジオストク間に貨客フェリー就航計画
3.情報交換のための研究フォーラムの設置
NEANETとしては、上記のプロジェクトの進展状況を随時収集して、会員間の情報共有が出来るようにするために、2ヶ月に1回程度、時宜に応じたテーマを選択の上、研究フォーラムをおこなうことと致したい。 このフォーラムは(一財)みなと総合研究財団殿との共催とし、同財団の3階会議室を利用する。研究成果は「北東アジア交流白書」に反映させる。
研究フォーラムの1~3回までの予定:
第1回 6/26(金) 「中国とモンゴルにおける環境ビジネス}
田中 弘 環境ビジネス開発イニシアテイブ代表
第2回 8/7(金) 「2015年日中経済協力会議-於瀋陽」の報告
後藤正博 日中東北開発協会 事務局長
第3回 9/26(金) 「ユーラシア横断中欧輸送回廊(一帯一路・AIIB」(仮題)
町田一兵 明治大学講師
4.NEANETとFEMRIとの間に「覚書」を調印
2015年4月20日付けで「ロシア極東海洋研究所(FEMRI)との間で以下の「覚書」を交わした。FEMRIは上記2.の北東アジア開発事業の港湾設備設計などに実績があり、関連情報を保有しており、従来から種々の研究における日本側の有力なパートナーである。当面は下記のアイテムを対象に情報交換などの協力を行う。
① 極東ロシアの水産加工基地
② 「大ザルビノ港」プロジェクト
③ パルチザンスク石炭開発と港湾
④ 日本海横断航路開設
5.交流白書の作成、情報の共有と広報:
1) 本年度も「北東アジア交流白書2014」を作成する。
何れも会員からの情報提供、寄稿をお願いする。
2) NEANETホームページの活用
3) NEANETメールニュースの発信
6.NEANETの会員増加のため、新規募集に協力をお願いする。
3.第11期の決算報告ならびに第12期の収支予算書
1)活動報告書(概要)
経常収益計 4,231,337円
受取会費 1,151,167
受託事業収益 2,978,000
その他 102,170
経常費用計 3,356,819
事業費 1,814,802
管理費 1,542,017
当期経常増減額 874,518
法人税 70,000
当期正味財産増減額 804,518
前期繰越正味財産 793,132
次期繰越正味財産額 1,597,650
2)貸借対照表、財産目録・第12期収支予算書についてはここでは割愛します。
3)当期の納税額は、法人都民税70,000円のみ。消費税は課税売上1000万以下の為課税なし。
以上、いずれも適正に処理されていると監査役より報告され、満場一致で承認された。
*詳細内容を必要とされる場合には事務局にお問い合わせ下さい。 /以上